就労支援と支援の考察 (継続考察)

データをことばに・数字を観える化、文章化


日本の障害者就労支援には、社会政策上いくつかの構造的課題が指摘されています。

代表的なものを3つ整理します。

① 支援制度の分断

就労支援は、

ハローワーク(雇用)

厚生労働省の福祉サービス

医療機関

など複数の制度に分かれています。

制度ごとに目的や予算が異なるため、支援が連続しにくく、利用者が制度の間で孤立することがあります。

(そもそもの支援環境の整備の課題)


② 支援人材の不足

障害者は約1,000万人以上いる一方、専門的に就労支援を行う職員は限られています。

そのため

個別支援が十分にできない

継続的なフォローが難しい

といった課題があります。


③ 雇用の質の課題

障害者雇用は進んでいるものの、

短時間雇用

低賃金

福祉的就労への集中

などの問題も指摘されています。

制度上の雇用率達成が重視され、本人のキャリア形成や安定した働き方につながりにくい場合があります。

これらの課題は、日本の障害者雇用政策の中心制度である

障害者雇用促進法の運用や、福祉サービスである

障害者総合支援法との関係の中で議論されています。

欧州との比較

例えば

ドイツ

フランス

では、日本と同様に雇用率制度がありますが、同時に

企業負担金を強化

職業リハビリ機関の充実

個別支援人材の多さ

などが特徴です。そのため欧州では、雇用・福祉・教育を一体化した就労支援が進んでいる


④ 福祉的就労の人数構造

障害者総合支援法のもとで提供される就労支援サービスには次のような構造があります。

就労移行支援:約3~4万人

就労継続支援A型:約8~9万人

就労継続支援B型:約35~40万人

特にB型事業所の利用者が圧倒的に多く、一般就労に移行する前段階というより、長期的な福祉的就労の場になっているケースが多いと指摘されています


日本の障害者就労支援では、福祉サービスから一般就労へ移行する割合は次のような水準とされています(厚生労働省の統計ベース)。

サービス 一般就労への移行率

就労移行支援 約55%

就労継続支援A型 約25%

就労継続支援B型 約13%

つまり、

A型:約4人に1人

B型:約8人に1人

程度が一般企業へ移行しています。

さらに現場データでは、

A型事業所でも半数以上の事業所で移行者が0人という調査もあり、移行機能の弱さが課題として指摘されています。


制度上の役割は

就労移行支援 → 一般就労を目指す訓練

A型 → 雇用契約ありの福祉的就労

B型 → 雇用契約なしの福祉的就労

ですが、実際には

B型 → 長期利用

A型 → 福祉的雇用の場

になりやすく、一般就労への移行が限定的という構造が指摘されています。


障害者総合支援法に基づく 就労継続支援B型 の平均工賃(月額)は、近年次の水準です(厚生労働省統計)。

就労継続支援B型の平均工賃

月額:約17,000円前後

時間額:約230円前後

年度の例

2021年度:約 16,507円

2022年度:約 17,031円

2023年度:約 17,500円前後(推計)

特徴

最低賃金は適用されない

工賃(生産活動の分配金)として支払われる

事業所ごとの差が大きい


意味すること

B型利用者は全国で 約35~40万人とされ、平均工賃が月1~2万円台のため、生活の多くは

障害年金

生活保護

家族支援

などに依存する構造になっています。


▶ 国際機関からの指摘

国際連合の障害者権利条約を監視する

国連障害者権利委員会は、日本に対し、障害者が一般労働市場から分離された形で働く仕組みが残っている点を課題として指摘しています。特に、B型のように最低賃金が適用されない福祉的就労は、国際的には議論の対象になっています。

欧州の流れ

例えば

ドイツ

スウェーデン

などでは、保護的作業所は存在するものの、近年は「一般労働市場への移行」や

「支援付き雇用(supported employment)」を重視する政策へと移行しています。


B型 :  長期滞留構造(一般就労への移行の弱さ)

障害者総合支援法のもとでB型は本来「働く機会の提供」を目的としますが、実際には長期利用が一般的です。一般企業への移行率は1割前後と低く、結果として福祉的就労が半恒久的な就労形態になっています。

・ 工賃水準の低さ

平均工賃は月1~2万円程度で、最低賃金が適用されません。生活の多くを障害年金や家族支援に依存する構造が生まれ、労働としての自立が難しいという問題があります。


・事業所運営の構造問題

B型事業所の収入は、

利用者の生産活動収入

福祉サービス報酬

の組み合わせで成り立っています。そのため、生産活動の収益性よりも福祉サービスとしての安定運営が優先されやすいという指摘があります。


・ 分離型就労の問題

国際連合の障害者政策では、一般社会の労働市場への参加(インクルーシブ雇用)が重視されています。しかしB型は一般企業とは異なる場で働くため、社会参加が限定されやすいという議論があります。

・ 地域格差

工賃や作業内容は事業所によって大きく異なります。地域産業や事業所の経営力に左右され、同じ制度でも働く条件に大きな差が生まれています。



▶就労支援とチーム支援の課題:     ●

地域連携が掲げられていてもチーム支援が少ない理由は、主に制度構造と運営の問題にあります。

① 制度の縦割り

就労は ハローワーク、福祉は自治体、医療は医療機関など、制度が分かれており、根拠法も

障害者総合支援法

障害者雇用促進法

など別々です。予算・評価・責任主体が異なるため、自然にチームが形成されにくい構造があります。

② 連携を評価する仕組みが弱い

現場の支援機関は

利用者数

就職件数

などで評価されることが多く、連携そのものは評価指標になりにくいため、時間をかけたチーム支援が広がりにくい面があります。


③ 支援人材の不足

ケースを調整するコーディネーター役が不足しており、各機関がそれぞれ支援する形になりやすい傾向があります。


④ 情報共有の壁

個人情報の取り扱いや機関間の文化の違いから、医療・福祉・雇用の間で情報共有が進みにくいという課題もあります。


実際には包括的なチーム支援として機能するケースは限られると指摘されています。


日本の障害者就労支援を改善するには、制度の枠を超えた構造的な見直しが重要だと指摘されています。主な方向性は次の3点です。

① 医療・福祉・雇用の一体化

現在は

ハローワーク

医療機関

福祉事業所

がそれぞれ別制度で動いています。

そのため地域ごとにケース会議やチーム支援を制度として位置づけ、継続的に支援できる仕組みを整えることが必要とされています。


② 福祉的就労から一般就労への橋渡し強化

障害者総合支援法のもとで提供されるB型などは、長期利用になりやすい課題があります。

そのため

職場実習

支援付き雇用

ジョブコーチ

などを強化し、一般企業で働く機会へつなぐ仕組みを拡充することが重要とされています。


③ 地域企業との協働

障害者雇用は企業側の理解や職務設計も重要です。

障害者雇用促進法の雇用率制度に加え、地域企業と支援機関が協働し、実際の仕事を地域の中で創り出す取り組みが求められています。


日本の就労支援を横断的なチーム支援へ転換する場合、ポイントは「報酬設計」「仕組み」「法的根拠」の3つです。

① 報酬は何で設計するか

現在の福祉サービスは、主に

障害者総合支援法のサービス報酬(利用日数など)で設計されています。

しかしチーム支援を強化するには、次のような報酬設計が必要と考えられます。

ケースマネジメント報酬

支援会議・連携調整を評価する報酬

就労定着報酬

就職後6か月・1年など継続就労を評価

地域連携加算

医療・企業・福祉の共同支援を評価

つまり

「サービス提供」→「成果・連携評価」

へ報酬の軸を広げることです。


② 横断的な仕組み

制度横断を実現するにはコーディネート機能が必要です。

具体例

地域の就労支援コーディネーター

医療・福祉・企業のケース会議制度化

情報共有プラットフォーム

現在も

障害者就業・生活支援センター

が近い役割ですが、権限や資源は限定的です。


③ 法的な建付け

現行制度では主に次の法律が関係します。

障害者総合支援法(福祉サービス)

障害者雇用促進法(企業雇用)

地域共生社会推進関連法(地域包括支援)

理論上は

障害者総合支援法の報酬改定+雇用促進法の連携強化

でかなりの部分は実現可能とされています。


日本で「就労支援産業」が拡大した背景には、制度設計と社会構造が重なったいくつかの要因があります。

① 制度報酬による市場形成

障害者総合支援法では、就労支援サービス(就労移行支援、A型・B型など)に対して事業所ごとに報酬が支払われる仕組みが整備されました。これにより民間法人や企業の参入が増え、就労支援事業所の数が急速に拡大しました。結果として、支援が「公共サービス」であると同時に、一つの産業領域としても成長しました。


② コーディネート機能の弱さ

本来は地域で就労支援を統合する役割を担う

障害者就業・生活支援センター

がありますが、数や人員が限られています。そのため、支援が地域チームとして統合されず、個別事業所単位で拡大する構造になりました。



対象となる人が多いにもかかわらず、就労支援の人材が十分に増えない背景には、いくつかの構造的な理由があります。

① 専門職としての位置づけが弱い

日本では就労支援職が独立した専門資格として確立されているわけではなく、福祉職の一部として扱われることが多いです。制度上は

障害者総合支援法

のサービスの一つとして位置づけられているため、専門キャリアとして育成する仕組みが十分に整っていません。


② 報酬水準と人材確保の問題

福祉サービスは公定報酬で運営されるため、給与水準が高くなりにくく、人材確保が難しいという課題があります。

結果として経験を積んだ支援者が他分野へ移ることもあります。


③ 業務の複雑さ

就労支援は、就職支援だけでなく

生活支援

医療との連携

企業調整

など多面的な対応が必要です。しかし研修や実地教育が十分ではなく、実践的なスキルを身につける機会が限られていると指摘されています。


④ 制度の分断

企業雇用は

障害者雇用促進法

福祉サービスは

障害者総合支援法

と制度が分かれているため、医療・福祉・雇用を横断できる人材が育ちにくい構造があります。



ハローワークに配置されている難病患者就職サポーターは、難病のある人の就職相談や企業との調整を担う重要な役割ですが、現場ではいくつかの課題が指摘されています。

① 人員が少なく対応範囲が広い

サポーターの配置数は限られており、一人で多くの相談を担当することがあります。そのため継続的な伴走支援や職場定着支援まで十分に関われない場合があります。

② 医療との連携の難しさ

難病の就労では、症状の変動や治療との両立が重要です。しかし医療機関との情報共有や連携の仕組みが十分とは言えず、医療と雇用の橋渡しが個人の努力に依存しやすいという課題があります。

③ 就職後のフォローが弱い

ハローワークは本来「職業紹介」が中心機能のため、就職後の長期的なフォローは十分に制度化されていません。そのため就職はできても職場定着が難しいケースがあります。


④ 地域支援機関との役割分担

地域には

障害者就業・生活支援センター

や福祉事業所などがありますが、役割分担や連携方法が地域によって異なります。その結果、支援が断続的になったり、重複したりすることがあります。


ハローワークの難病患者就職サポーターについては、研修や専門教育が十分とは言えないという指摘は多くあります。主な理由は次の点です。

① 体系的な専門研修が少ない

難病就労支援では

病状の変動

治療との両立

就労配慮の調整

など高度な理解が必要ですが、医療知識や就労支援を統合した体系的な研修制度はまだ限定的です。多くは短期研修やOJTに依存しています。


② 専門資格制度がない

欧州などではジョブコーチや就労支援専門職の資格制度がありますが、日本では難病就労支援の専門職資格が制度化されていません。そのためスキルの標準化が難しい状況です。


③ 配置形態の問題

難病患者就職サポーターは非常勤や任期付きの場合もあり、長期的なキャリア形成や専門性の蓄積が難しい面があります。

④ 医療連携研修の不足

難病支援では医療機関との連携が重要ですが、医療・福祉・雇用を横断した合同研修やケース共有の仕組みはまだ十分に整っていません。


⑤この支援窓口ができたときの採用要件が厳しくなかった

そのため、専門性がそれほどなくても採用された経緯もあり、その採用から、再雇用を繰り返している職員がおり、地域独自のやり方、属人的な支援仕方になっている傾向がみかれる。

担当が1人で、他の労働局の社員、ハローワークの社員、職員は人事異動するなか、非正規雇用のサポーターが再雇用を繰り返し、長くなると、その職員の独自なやり方が通りやすくなる。地域の支援が特定の人材のスキルや考え方の影響を受ける事態が生じている。(都道府県員より取り組み方にも差異があるため、全体像を把握する為の調査は必要ではないでしょうか)

(評価がわかりにくい、外部に公開されない)

地域の取り組みの状態を公表してみる 採用者数や定着支援、定着率なども評価、共有するのがいいのではないだろうか。(サービス、サービスにおけるマナーなども大切であるのかもしれません。)


実践的な研修の提供、独自のやり方に偏りすぎない支援のルール、枠組みの整備なども大切であるかもしれません。






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