政策形成の公正性及び資金的影響力の規制に関する条例の必要の検討
1.「利益相反の公開」から「政策影響力の購入規制」へ
従来の利益相反制度は、誰からお金を受け取ったかいくら受け取ったか
申告したかを問題にします。しかし、本質的には、なぜ資金を出したのか
資金提供後に何を求めたのかどの政策、予算、制度、承認、薬価に関係したのか
資金提供によって接触機会や発言機会が増えたのか資金を出していない市民と比べて特別なアクセスを得たのかを見る必要があるのではないでしょうか。
政策影響力の購入及び不当な政策介入を防止する条例 あるいは、政策形成の公正性及び資金的影響力の規制に関する条例
の必要 条例づくり等を検討してまいります。
2.資金提供には「目的がある」という前提に立つ
民間企業は営利組織です。寄付、研究費、協賛金、パーティー券購入、講演料などについて、すべてが直接的な見返りを要求するものとは限りません。
しかし、少なくとも企業側には、企業イメージの向上
疾患や治療法への社会的関心の形成
自社製品が使用されやすい環境づくり
政策決定者との関係形成
情報への早期アクセス
規制や予算への働きかけ
自社に好意的な研究者・団体とのネットワーク形成
といった合理的な目的があります。
ですから、制度上は善意を前提にするのではなく、
利害関係者による資金提供には、現在または将来の政策的、経済的、社会的利益を得る可能性が伴う という前提を置くべきです。
これは「企業はすべて悪い」と断定することではありません。利益を得る立場にある以上、政策形成への接近には制限を設けるという考え方です。
3.まず「利益を得る可能性がある側」を定義する
規制対象は、実際に利益を得た企業だけでは不十分です。政策が動けば利益を得る可能性がある者を対象にします。
例えば、次の対象等
製薬企業、医療機器企業
業界団体、政治連盟
関連財団、子会社、研究支援会社
コンサルティング会社、広告代理店
医療法人、保険会社、介護事業者
特定の制度改正や予算措置により利益を得る団体
これらから委託を受けた研究者、学会、NPO
企業資金への依存度が高い患者・当事者団体
将来の再就職先となる可能性がある企業・団体
ここでいう利益は、売上や株価だけではありません。
市場拡大
補助金獲得
薬価維持
規制緩和
承認の迅速化
公的保険の適用
委託事業の受注
社会的信用の獲得
政策情報への早期アクセス
も含めます。
4.「出したお金」と「動いた政策」を結び付ける
現在の制度では、資金提供と政策変更が別々に記録されるため、関係性が見えません。
そこで、資金を提供した企業・団体には、
この資金提供によって、どのような政策上、事業上、社会上の利益を期待しているか
を事前に届け出
例えば、
疾患啓発
研究促進
制度改正
公的保険適用
医薬品アクセス改善
予算増額
診療報酬改定
薬価制度への意見反映
などを具体的に登録します。
そして、資金提供後の一定期間に、関連する法案が提出された 予算が増額された 審議会で同様の意見が採用された 薬価や診療報酬が変更された ガイドラインが改定された
補助金や委託事業が創設された 場合には、資金提供との関連を検証します。
因果関係を直ちに断定するのではなく、検証対象となる関係として自動的に可視化する仕組みです。
5.公開しても許されない領域を決める
透明性制度は、「公開さえすれば何をしてもよい」という免罪符になりがちです。
したがって、次の行為は、公開の有無にかかわらず禁止または厳格に制限します。
原則禁止とするもの(例 詳細はひろく検討)
所管企業から規制担当者への金銭・便益提供
政策を審議する委員への当該企業からの研究費、謝金
審議中の政策に利害を持つ企業による委員選任への関与
企業が作成した政策提言を患者団体名義で提出する行為
資金提供者による研究結果、声明、提言内容への事前承認
政治献金やパーティー券購入と政策要望を一体として行うこと
補助金や許認可の担当者と対象企業との再就職交渉
企業から多額の資金を受けた者が当該企業に関する採決を行うこと
つまり、開示で対応する軽微な利益相反と、開示しても許されない利益相反を分ける必要があります。
6.「お金を出した者ほど発言できる」構造を改める
民主主義の歪みは、企業の意見が存在することではありません。
企業は、
専門スタッフを雇える
調査報告書を作れる
議員や官僚に何度も面会できる
パーティー券を購入できる (製薬企業・団体も購入 パーティー券購入実績は公表されている)
研究費や寄付を提供できる (提供の目的)
広告やメディア発信ができる (大手広告会社にお金を出してトレンドを形成できる 今みているトレンドも、資金力などによりある程度の形成が可能 これは選挙活動などへ影響も懸念されるのかもしれません。)
一方で、一般市民や小規模な当事者団体には同じ力がありません。
そのため、「すべての関係者の意見を聞いた」という形式を取っても、実際には資金力のある側の意見が圧倒的に多く政策形成に入る可能性があります。(調査課題)
これを是正するには、次のルールが必要かもしれません。(調査段階)
アクセスの平等化
政策担当者との面会は、献金、寄付、協賛の有無に左右されない統一ルールで受け付けます。
発言量の上限
同一企業・同一業界による面会、ヒアリング、審議会参加に上限を設けます。
市民枠の保障
企業資金を受けていない市民、患者、支援者、独立研究者の発言枠を保障します。
公費による参加支援
資金力のない当事者が政策形成に参加できるよう、交通費、資料作成費、調査費を公費で支援します。
対抗的意見の提出
企業や業界団体から政策提案が提出された場合、独立した第三者による反対意見・影響評価を必須にします。(日本は、公平性といわれながら、推進側の団体ばかりが資金を背景に形成、片側の意見に偏る傾向が社会的に見受けられる )(社会課題)
7.政治資金と政策決定を切り離す
特定の政策によって利益を得る可能性のある企業・団体が、その政策を決定する議員や政党に資金を提供できるのであれば、政策を支持しているから資金を出したのか 資金を出したから政策が動いたのか を完全に区別することは困難です。
そのため、少なくとも次のような規制が必要です。
・所管業界から所管議員への献金禁止
・関係法案の審議前後における献金・パーティー券購入禁止
・業界団体、子会社、役員名義による迂回献金の合算
・一定額以上の献金を受けた議員の審議・採決回避
・献金先議員が関与した法案、質問、予算要望の公開
・政治資金提供者と議員との面会記録公開
・資金提供と政策変更を横断検索できるデータベース
さらに進めるなら、企業・団体献金そのものを原則禁止し、政治活動を個人による少額寄付と公的助成を中心に再構築する考え方もあります。(お金による忖度、癒着、利害関係による政策への影響を防ぐ観点 (政治のこんにちの在り方などの検証 社会議論を避けない視点 イノベーションの観点より)
8.研究資金も同じ構造で考える
研究費は必要ですが、資金提供者が、研究テーマを決める 比較対象を決める
データを保有する 論文公表を承認する 不都合な結果の公表を止める 研究者の継続的な資金源になる 場合、研究は政策や販売促進の手段になり得ます。
したがって、企業から研究者への直接支払いを避ける
独立した公的基金を介して配分する
企業は基金に拠出しても研究テーマ・研究者を指定できない
全研究計画と全結果を登録する
否定的な結果も公表する
原データへの第三者アクセスを保障する
資金提供企業の政策要望と研究成果の利用状況を公開する
という仕組みが必要です。(現在、いただく声には、企業が患者コミュニティーに入り、アンケートなどの協力に、以前よりもお金がかかる、要求がある場合がある、とのことでした、その金額が大きく、大学などの研究では予算に対応できない、「企業が入っている」という証言でした。特定の企業・業界の関与により、情報が外部にでにくくなる そこに意図があるのかは現段階では不明ですが、情報の意図的な関与がある場合は、対策が必要になるのかもしれません。)
これは「企業は研究費を出すな」ではなく、お金は出せても、研究の方向、結果、政策利用を支配できない構造にするということです。
9.患者・当事者団体にも同じ原則を適用する
当事者団体が政策形成に参加することは大切です。しかし、企業から資金を受けた団体が、企業と同じ方向の制度改正を求めている場合、その意見を無条件に「患者の声」と扱うべきではありません。
確認すべきなのは、
誰が提案内容を作ったか
企業から資金や人員の提供があったか
団体内部で当事者が意思決定したか
反対意見や少数意見が排除されていないか
資金を受けていない当事者の意見も確認したか
です。(資金・ノウハウの提供による、能動的な忖度促しの影響力)
そして、企業資金を受けた団体を排除するだけでなく、企業資金に頼らず活動できるよう、独立した公的助成制度を設ける必要も考える必要があるのではないでしょうか。(支える仕組み・構造の課題)
そうしなければ、「企業のお金を受けるな」と言いながら、活動資金を用意しないことになってしまいます。
10.制度の中心となる考え方
条例の基本原則は、次のように整理できます。
政策決定への参加機会は、資金提供能力によって購入されてはならない。
政策によって経済的利益を得る可能性のある者は、政治家、公務員、研究者、当事者団体その他の政策関係者に対して、政策判断に影響を及ぼし得る資金又は便益を提供してはならない。
利益相反の開示は、禁止される行為を正当化するものではない。
資金力のない市民及び当事者にも、資金力のある企業・団体と実質的に対等な政策参加機会が保障されなければならない。
条文の中心案
政策影響力の購入の禁止
何人も、金銭、物品、役務、雇用機会その他の利益を提供することにより、政策決定者への接触、情報への優先的なアクセス、審議会等への参加、政策提言の採用その他の政策上の取扱いを取得し、又は取得しようとしてはならない。
利害関係者による資金提供の制限
政策、法令、予算、許認可、価格決定、補助金その他の公的判断により利益を得る可能性のある者は、当該判断に関与する者及びその関係団体に対し、資金又は便益を提供してはならない。
公開による免責の否定
利益相反関係を公開したことは、本条例により禁止される行為を正当化し、又はその責任を免除する理由とはならない。
資金提供をすべて悪とするのではなく、政治、研究、当事者活動への支援と、政策への影響力の購入を制度的に分離
透明性の向上だけでは現在の構造はほとんど変わらないのではないでしょうか。
特定の利害関係者中での検討とどまらず、
多様な関係者、学会、発表の機会、勉強会の機会で、多くの皆さまととに考えてまいります。
0コメント